UNDER THE CODE : ICELAND

雨、風、雪、氷、晴れ、虹、雹、霧。
アイスランドでは、それを一日の中で全部体験することがある。

火山と氷河が同じ島に存在し、地面からは熱が上がり、そのすぐ先には巨大な氷の世界が広がっている。

この旅で確かめたかったのは、「氷河は本当に溶けているのか」。

ニュースや数字で知るのではなく、そこで暮らす人に話を聞き、自分の足で氷河を歩き、カメラを持って現場へ向かった。

1. 面白くする、という答え

僕のロケは、まず専門家に話を聞くところから始まる。

今回会ったのは、アンドリ・スナイル・マグナソン氏。作家であり、思想家、映画監督、環境活動家でもある。アイスランドで、自然環境の変化を長く伝えてきた人物だ。

僕は彼に聞いた。

「環境問題を、本や映画にして伝えるとき、何に気をつけているのですか?」

彼は少し笑って、シンプルに答えた。
「面白くすること。」

氷が溶け、海面が上がる様な環境問題は、決して楽しいテーマではない。それでも彼は、昔の物語や映画からヒントを拾い、環境問題を面白い物語に変換して届けているという。

そして繰り返し話していたのが、恐怖ではなく希望を語る、ということ。恐怖で人を動かすのは簡単だ。でも、数字は頭には届いても、心には響かない。

2. 800年前の空気が眠る場所

翌朝、ホテルを出たのは5時。気温は−2℃。まだ外は暗い。

アイゼンを付け、懐中電灯を頼りに氷河の上を歩き始めた。

一歩進むたびに、ザクザクと氷を踏む感触が足の裏から伝わってくる。前を進むチームの足音だけが、暗闇の中に響いていた。

目指したのは、氷河の中にできたICE CAVE。この氷河は平均すると約800年前に形成されたといわれている。数千年前の層もあれば、最近降った雪が圧縮された部分もある。長い時間をかけて積み重なった氷の上を、自分たちが歩いている。

洞窟の入口に着くと、想像していたよりずっと大きかった。
幅は10メートルほど。下には川が流れ、天井は低いところで1メートル、高いところでは10メートルを超える。

中へ入り氷にライトを当てると、層の中に閉じ込められた無数の気泡が見えた。そこには、数百年前の空気がそのまま残っているという。

やがて朝陽が昇り始め、入口から差し込んだ光が氷の壁に反射した。
その一瞬だけ、僕には世界が青白く揺れたように見えた。
その光を逃さないように、カメラを構える。

普段なら次の仕事や企画、売上やマネジメントのことが頭のどこかにある。でも、このときは目の前の景色だけを追っていた。

光がどこから入り、氷がどう見えるのか。
“今”だけを撮ることに集中した。
集中しないと、もったいない。

洞窟を出ると、氷河の表面には朝の光が広がっていたので、急いでドローンを飛ばした!

3. 山の上から見えた、氷河の現在地

アイスランドを移動していると、地球が動いてきた痕跡があちこちに現れる。
数百年前の巨大な溶岩が、そのまま黒く固まった大地。山に登ってクレーターを上から覗けば、直径数百メートルにもなる大きな窪みが広がっている。

一方で、国土の約10%を覆う氷河は年々減少しているという。
現地のドライバーが、山の向こうを指して教えてくれた。

「100年前は、あの辺りまで氷河があった。」

反対側の山へ上がり、そこから氷河を撮影してみる。
地上にいると分からなかった距離が、高い場所から見るとはっきり見えた。

氷が後退し、岩肌が露出している。
ドローンが飛ばないほどの強風。溶岩の匂い。氷河を踏んだときの音。地面から伝わる地熱の温度。
身体で体験することで、それまで情報だったものが急にリアルになる。

そして街へ戻れば、また違う景色がある。

アイスランドの人たちは火山を恐れるのではなく、噴火の記録を残し、地熱を生活に利用しながら暮らしている。
火山と氷河という両極を抱えながら、その自然と一緒に生活しているのだ。

僕はアンドリが話していた、「恐怖ではなく希望を語る」という言葉を思い出した。

まず、自分で現場へ行く。自分の目で見て、音を聞き、身体で感じる。
そして、そこで見つけたものをどう伝えるのか。

アイスランドでも、改めてその大切さを感じることになった。

この旅で見た景色と、そこで撮影した映像は、その後、約10分のショートドキュメンタリー『Under the code : Iceland』として一本の作品になっている。

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