日本から約40時間。持てるだけのカメラにレンズ、ドローンを抱え、最小精鋭チームでアマゾンへ向かった。
気候変動と環境破壊によって、ジャングルが年々小さくなっているアマゾンは、本当に壊れているのか? 誰かの二次情報ではなく、自らの目とカメラで「一次情報」を確かめるためだ。
1. 知ったかぶりが一切通用しない世界
旅の最初に、ブラジル国立アマゾン研究所(INPA)を訪れ、ロバート博士が教えてくれた。
「長年の研究成果を、世界中の研究者と共有する。ジャングルとネイティブの人たちを守るために。
自然を守る為の知恵が、ジャングルに住む原住民の人々にとって、何が価値になり、何がビジネスになるかも分かってしまう。結果として、それが森の伐採や鉱物採掘のきっかけにもなっているんだ」
知識を広げれば世界が良くなるという単純な話ではない。価値を伝えると別の欲望も動き出し、新たな問題を生む。現代社会が抱えるリアルな問題の複雑さを突きつけられた後、僕たちは10日間の水上生活に入った。
ジャングルに一歩入れば、自分の無知さを思い知らされる。
噛まれれば銃で撃たれたような激痛が走る猛毒アリ(サシハリアリ)、木と同化して見分けがつかないヘビ、そして1年ぶりに姿を現した希少なトキイロコンドル(King Vulture)。
東京で現代生活をしていると、何でも知った気になっていたが、ここでは何一つ通用しない。
途中、時差と疲労と暑さで眠れなくなり発熱した。湿気で替えのTシャツも乾かない。だが、現地の人々が様々な植物から解熱剤や、痛み止めを作ってくれ、毒のあるキャッサバ芋から毒を抜いて食べさせてくれた。
そんな姿に触れるたび、ここでしか得られない「一次情報」の重みを実感した。
2. ジャングルは競争しない
広大なアマゾン川は、広い場所で川幅22km、水深100m以上。淡水魚だけで約2,000〜2,400種以上が知られ、未発見の生物も数多く眠っている。つまり、ジャングルはまだ進化の途中にあるのだ。
アマゾンの朝は早く、4時半に起きて5時には小型ボートで森の中へ向かう。
動物たちが動き出す時間にレンズを向け、現地の人々から植物や歴史の話を聞く。動植物がひしめくこの巨大な森を観察していて感じたのは、
「ジャングルは決して戦わないし、競争もしない」
アマゾンには推定4万種以上の植物が生息している。誰かだけが勝とうとするのではなく、一種類の植物が病気になっても、数万種の多様な生き物が補い合い、全体を支える。外敵すらも排除せず循環の中に取り込み、多様性で被害を分散し、再生力で時間を味方につける。何かが壊れても、全体は決して倒れない仕組み(エコシステム)を作っているのだ。
「強さとは、相手を打ち負かす競合力ではなく、多様性を受け入れることである」
過酷な自然の中で見つけたこの気づきは、僕たちがこれからの組織や事業、そして個人の生き方を考えていく上での道しるべになると思った。
3. 現場に立ち続ける理由
電気もガスも電波もないアマゾン川の静けさの中、夕陽を浴びながら泳いだ時間は、一生の宝物だ。
「アマゾンが本当に壊れているのか」については、引き続き調査が必要なのだ。
ジャングルはあまりにも深く広大で、まだまだ知らないことばかり。
僕たちは今後も「本物」に触れ続けたい。そこで掴んだ生々しい一次情報とそこから生まれる思想を、これからも表現者として届けていく。