ロゴは文字でも形でもない

スターバックスのロゴに、なぜ人魚がいるのか。 考えたことはあるだろうか。 コーヒー屋なのに、なぜ人魚なのか。 でも、あのマークを見ると、世界中のどこでもスターバックスだと分かる。 ロゴとは、そういうものなのだと思う。

文字や形を整えることではなく、 そのブランドがどんな空気を持ち、どんな時間を作り、何を大切にしているのか。 それを一枚に圧縮すること。 だから今日は、ロゴの話を書いてみたい。 最近はAIの進化で、誰でも簡単にそれっぽいデザインを作れるようになった。 でも、AIを使ったからといって、良いものになるわけではない。

何を作るのか。 何を表したいのか。

そこが見えていなければ、仕上がりも曖昧になる。 AIで作ったとしか思えない、どこかで見たようなロゴやポスターが街にあふれてきている。 僕はそれが、ずっと気になっている。 ロゴやポスター、デザインは街の品格を決めるし文化を作る。 ヨーロッパに行くと気分が上がり、街を歩きたくなったり、普段飲まないワインを飲みたくなったりする。 そこに、自分よがりのポスターが貼ってあったら、良い気分も冷めてしまう。

WHITE GLASS COFFEEのロゴ

僕らには WHITE GLASS COFFEEというカフェがある。 「この場所で、どんな時間を過ごしてもらいたいのか? スターバックスとは、どう違うのか?」 信頼するデザインチームとの話し合いは、そこから始まった。 時間は3ヶ月以上。 数百の案を試して、ようやく辿り着いた。 ロゴはとてもシンプルだ。

扇形と長方形が重なって、コーヒーカップになっている。

扇形 = 時間を表す 時計の針が描く弧

長方形 = 場所を表す 空間の枠

中心にあるのは Coffeeで そのまわりに、時間と場所がある。

時間と場所が重なった所に、カフェが生まれる。 その関係を、ロゴにした。 線の太さも、長さも、色も、フォントも、すべて一から作る。 ロゴだけが借り物では、うまく収まらない。

作っているのは、ロゴではない

ロゴを作る時に、デザインチームと長く話していたのは、 「なぜ、お店を始めるのか?」 「どんな時間を過ごしてもらいたいのか?」 「スタッフには、どんな働き方をしてほしいのか?」 「来た人に、どう感じてほしいのか?」 「なにが違うのか?」

そこから形が生まれていく。 線の太さを 0.6mm 変える。 長さを 2mm 変える。 角度を 0.4度ずらす。

そういうことを何度も試して、 こちらの気持ちが一番伝わる線 を探した。 つまり、作っていたのはお店の輪郭だったのだと思う。

スターバックスのロゴの人魚のモチーフになっているのは、ギリシャ神話に登場する サイレン(セイレーン)。 美しい歌声で船乗りを魅了する、海の精だ。 創業者たちは、古い海洋関連の書籍を読み漁る中で、16世紀のノルウェーの木版画に描かれた 二つの尾を持つ人魚 に出会い、そこから着想を得たと言われている。 さらに、店名の由来は『白鯨』に登場する一等航海士 スターバック。 海の交易、航海のロマン、神話的な人魚像。 その全部が一つになって、あのロゴが生まれている。

コーヒーを売る店だから、茶色にすればいい、という話ではない。 そのブランドがどんな世界を見ていて、どんな物語を背負いたいのか。 それを一枚に圧縮したものが、ロゴなのだ。

7年経って分かること

WHITE GLASS COFFEEは、今年で7年目に入った。 毎日、座る場所がないくらい人が来る店になった。 朝はインバウンドのお客様で賑わい、閉店まで人が途切れない。 ロゴに込めた「気持ちの良い時間を囲む」という意味の通り、 コーヒーを囲んで、良い時間が流れる店 になっている。

何かを始める時、まずロゴとしっかり向き合ってほしい。 それは、自分の事業と向き合うことだから。

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